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No.096 研修会社の上司は、いったん拾う

2020.06.07

長年研修会社をやっており、お付き合いの長い講師とだとお互いの行動が手に取るようにわかるために、いわゆる阿吽(あうん)の呼吸で仕事が進むようになります。クライアントの担当者も研修担当が長くて研修についてよく知っている方だと、クライアント⇔研修営業⇔研修講師との関係がスムーズになり無駄な作業や気遣いがなくなるため、当日の運営がスムーズになって受講生にも喜ばれることが多いようです。

しかし、教育業界(予備校や塾も含む)は、飲食業や現場作業と並んで離職率の高い業界。もともと高学歴で高い志を持って就職・転職してくる方が多いので、現実とのギャップに悩む方も多いようで、結構、人の入れ替わりが早い業界です。研修会社に入社したての新入・中途社員が異口同音に口にする言葉が「この仕事って、次になにをしたらよいのか分からない」。お客様からの問い合わせがあって、担当者が訪問し、クライアントの要望を聞いて企画書を作成し、想定講師の日程を仮押さえして、講師同行して打ち合わせを行い、開催日程が近づくにつれて講師からテキストを受け取り、演習の指示を受け、テキストを印刷製本して、双方と当日の集合時間を打ち合わせて…と、矢継ぎ早に物事を進めていかなければなりません。このことから、研修の仕事(営業)は『段取り8分(事前準備で80%は決まってしまう)』と言われています。研修会社の営業やプランナー担当者は、前述のように開催日程の迫ってくる複数の案件をタイムリーにモグラ叩きゲームのようにこなさなければなりません。この“研修の流れ”が、研修業界に入社したばかりの社員には、なかなか理解が難しいようで、そこで出てくる言葉が前述の「次に何をしたらよいかわからない(段取りが見えない)」のセリフです。

本来はどのような業種でも、新しい仲間が入れば先輩者や上司、トレーナーが付いて手取り足取り教えてあげないといけないのですが、研修事業のもう一つの特徴が『足が長い』こと。例えば秋には来年度の4月~再来年3月のセミナーや研修のプログラムの構築、講師の選定、おおよそのカリキュラムなどを決めなくてはなりません。今まで、物販でモノを販売しており日銭で商売していた転職組には今から2022年の春の研修の話など、見当がつきにくい。おまけにこれが正解…と言う進め方もないので上司や先輩、トレーナーが細部まで指導する時間がないのです。

加えて、クライアントの人事担当者や事務局も他部門から異動してきたばかりで研修のことはさっぱり分からず、当然受講生は初参加。そのクライアントの研修全体像や歴史をしっているのは、末端の講師だけ…と言う状況もちらほら。。。。これでは受講生に迷惑がかかる可能性が懸念されます。

まず、研修会社において担当者が退職したり異動になった場合は、全く状況を知らない次の担当者に丸投げする前に、いったん上司がそのクライアントを引き受けましょう。これはクライアントサイドも同じで、研修の『決定権者』が責任をもって研修の準備に関わることが必要です。異動してきたばかりで研修のことはよく分からないから、研修会社の営業担当者を頼りにしたら、その営業担当も最近他業界から入社してきたばかりだったので、話がちぐはぐなまま…と言うこともないとは言えません。

世の中には段取りが勝負の業界が数多くあります。建築建設関係、イベント会社、旅行会社、人材紹介会社、そして研修会社、などなど。

いずれも、タイムリミットが決まっており日程を変更できない。放っておくと、どんどんタイムリミットが迫ってくる。これらの業界では極力離職率を減らす努力と担当者が居なくなった、退職した場合には必ず責任者がいったん案件を拾う…と言う当たり前の行動が必要ですね。

すべては受講生の利益に。

これが、企業研修における大切なキーワードなのです。